Gino0808の「雪女と蟹を食う」という、文学的の様で実はそうでもない、なんともまぁ、含みのあるタイトル。ずっと気になってたが、やっと読めた。非常に面白かったのでレビューをしようと思う。
■あらすじ
「その夏は凶悪なほどセミが鳴いていた」から始まるストーリは、他人にトラウマを植え付けようと、人前での自殺を試みるも、良いタイミングを逃しては自暴自棄になっている男の部屋から始まる。
所持金も残り3万円となり、「この金を使い切ってから死のう」と考え、それなら、「27年間の人生で食べたことのない、蟹を食ってから死のう」と決意をし、北海道で蟹を食べることを決意するも、手持ちが足りない。
そこへ、何不自由なく、何の悩みもなさそうな、セレブ妻とぶつかり、身につけているダイヤの指輪を奪うだけでも金になると思い立ち、家へと侵入するが、「お金でも、身体でも、好きにしていいので、乱暴にしないでください」と言われ、お相手頂き、2発ほど発射。
2回の射精で毒牙も抜かれ、北海道へ蟹を食いに行く事を話すと、セレブ妻もなぜか同意。二人でレンタカーで旅をする事になる。
ってお話。
■登場人物は二人。
自暴自棄になった自殺願望の男の仮名は北。
「犯罪者さん」と呼び続けるのは、便宜上、難しいとのことで仮名でも、名前を求められ、北に行くから「北」と名乗る。
首を吊ろうと、縄をくくるも、首にかけることすらできない、金を奪おうと家に押し入るも、人妻に、体よく扱われ、毒牙を抜かる。
旅が始まり、何がしたいか問われ、思い切って「セッロス」と主張をしてみても、犯罪者と被害者という、圧倒的有利な立場であるにもかかわらず、宥められ、無難に食事をしたり、ラブホに入って、雪枝をめちゃくちゃにしてやろうと決意するのに、裸で迫ってくる雪枝から逃げ出したりする、圧倒的弱者。
童貞ではなさそうだが、童貞臭のきつい、自分の意思を主張することができない性格の為、世間のあらゆるものから搾取されているような理不尽な扱いを受けてきた様な過去が見え隠れする。
雪女と呼ばれる、クールな佇まいのセレブ妻 雪枝彩女
ゴツいダイヤの指輪をし、完成な住宅街の一際大きな豪邸に住むセレブ。スタイル抜群。
強盗に押し入れられるも、すかさず、「身体のお相手ならします」と、ベットの誘い込み、雪女がいたら、こんな風に笑うのだろうと称される、微笑みを飛ばすスーパークールビューティ。
湯葉定食を頼む北に対し、うな重を頼んでおいたり、AVが流れ、慌てる北に対し、元AV女優と冗談を言ったり、器量の良さが半端ないが、その行動の元となる心の闇が気になり、おっさんな俺はこの物語に引き込まれて行く。
■「しがらみからの開放」と三十路人妻のエロス
1巻読んで、多くは語られていないにせよ、これは二人それぞれの、「しがらみからの開放」を求める物語であることを察する事ができる。犯罪歴や、環境、人間関係、旦那、トラウマ等々。
雪枝の心に色濃く残る闇とはなんなのか?一方、雪枝にハマり、青春をやり直そうとすらしていた北も、パンドラの箱の奥底においてきた死のうとした理由と改めて向き合うのか。どんどん物語に引き込まれて行くが、個人的なベストシーンはやはり、雪枝が雪女と称される微笑みを見せたシーン。
強盗に押し入られたのを、積極的に2回も抜いて「三十路の女に貞操観念なんて幻想ですよ。ましてや人妻、あるふりをするのが上手だけです」と言い切るなんて、なかなかできるもんじゃなくないですか?私の経験値が低いだけですか?
確かに30越えた人妻にとってはロマンチック(セッロス)の1回や2回、大した事ないでしょう。むしろ、金持ちの年上旦那と結婚したのであれば、一方的なロマンチックで奉仕を強要されたり、他所で愛人作られて、ロマンチックレスになっているかもしれない。もしかしたら、27歳の女日照りの男子とヤる機会なんか、ちょっと美味しいのかもしれない。
にしてもですよ。
上記のセリフ、男の白い分泌液を手に出して、ペロってやりながら言ってますよ?30歳であれできるの、蓮実クレアか波多野結衣くらいじゃないですか?あまりの妖艶さにゾクゾクしちゃってます。私、アラフォーですけど。
加えて、あの器量ね。並の人生経験ではないでしょ。雪枝は冗談と言っていたけど、元AV女優やらキャバ嬢のラインはなくはないかと。
確かに、北くんの抱えている困難や、自分の力ではどうにもならない様な環境、生き辛さ等、色々あるのは分かる。人のせいにするしかなかったり、死にたくなるのもわかる。共感できる部分はある。あるよ。
ただ、雪枝のあの、物憂げな表情と、恵体を前に、「弱者の北なんか、どうでもいいんだ。雪枝を出せ!!雪枝だけ出せ!!!」と叫んでいる自分がいるんです。北物語なんか、どうだっていいんです。
ただ、雪枝のあの、物憂げな表情と、恵体を前に、「弱者の北なんか、どうでもいいんだ。雪枝を出せ!!雪枝だけ出せ!!!」と叫んでいる自分がいるんです。北物語なんか、どうだっていいんです。
そんな訳で、雪枝彩女にぞっこんです。
■中禅寺湖の美しさ
あと、もう1点。
中禅寺湖がめちゃくちゃ綺麗に描かれて、行きたくなってしまった。
昔、日光東照宮は行った記憶があるが、中禅寺湖は覚えてない。
雪枝が「知らないまま年を取るとこでした」と見惚れ、「大人の夏休みしちゃいましょうか」と言い放った場所。できる事なら、私も会ったばかりの人妻とランデブー(死語)してみたいが…。
ったく、どんな夏休みだよ。北に殺意さえ覚える。
雪女と蟹を食う1巻 試し読みはこちら
本日のことば
雪女と蟹を食う1巻
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